ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」の新訳が大評判だという話を、新聞か何かで見て以来すごく気になっていた。実はこの本、中学時代に一度、高校時代に一度、第一巻で早々と断念しているからだ。その後、多くの著名人が「必読の書」として推薦しているのを見るその度に、「やり残した宿題」を指摘されているような気分を味わったきた。
1月下旬から読み始めてようやく第5巻「エピローグ」まで読み通すことができた。大きなテーマを提示している第2巻を越えると、あとはかなり順調に進んだ。この本を読みきった後の充実感や達成感は、「カラマーゾフの兄弟」がひとつの物語でありながら非常に多くのテーマを含んだものとなっているところにあるのだろう。
フョードル、ミーチャ、イワン、アリョーシャ、スメルジャコフ、グルシェーニカ、カテリーナ、リーザ、イリューシャ、スネギリョフ、コーリャなど登場する人物が極めて特徴的だ。どの人も十分に心理学者や精神科医の研究対象となれるほどである。この非常に濃い人たちと実際にお付き合いすることと比べたら、ストレス社会で日々メンタルヘルスの危機に脅かせられていても淡々と過ごせる気がしてくるから不思議なものだ。
一方で、実は我々の脳のなかには、この物語の登場人物と同じ人格を持つ部屋があって、たまたま鍵がかかっているだけ、または道がついていないだけといった状態なのかもしれないと感じた。脳は3分の1も使われておらず、残りは閉じられたままなのだ。現代医学はかなりのところまで心(脳)の働きを解明しているようなので、薬や外科手術であらゆる性格を作り出したり、操作することができるようになるかもしれない・・・。
このカラマーゾフの新訳だがロシア語の名前の表記に始まり、色々と読者が途中で挫折しないように非常に工夫されているので、是非お薦めしたい。訳者は亀山郁夫氏。読んだ後もずっと長くお付き合いが続くことが確実な一冊だ。
光文社古典新訳文庫⇒ http://www.kotensinyaku.jp/books/book01.html
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